小説:「月島慕情」浅田次郎

日本文学

わたしのこと

東京のタクシー乗務員、みやびと申します。

この仕事に就いてから、楽しくもなかなか読書の時間も取れず、もっぱら短編集を読んでいます。📚✨

浅田次郎

20230829読了

大好きな作家・浅田次郎は、登場人物の魅せ方も好きだし、絡め方も好き。

歴史作家としても信頼していて、尊敬する作家の1人。話の組み立て方も参考にしています🤔✨

浅田次郎が書いた、この『月島慕情』という本は、大正時代の吉原、月島が舞台です。

吉原で『大夫』を張った、今でいうところのナンバーワン芸妓が引退を考える歳になり、、、

店の親父さんに身請け話を持ち出されます。その相手はなんと、自分の大好きな男性。❤️

えっっっ、でも… おアシはどこから?

身請けには、莫大な金がかかります。💰✨

ただ吉原へ遊びに来るのとは訳が違う。どうするのかしら…?と思いながら、、大夫は囚われることのない新しい人生に心躍ります。

幼い頃に連れてこられて以降、出たことのない吉原から抜け出せる。

芸も身体も差し出して働く、この家業から足を洗って、惚れた男と生きてゆく… そんな幸せを噛み締めて。

さて、この小説でいう起承転結の、起と承を、あらすじとして書いてみました。

読み進めてゆく内に… 私は色んな事を考え始めます。

先ず、吉原の遊女のこと。

吉原に売られた太夫、つまり遊女であるこの主人公が、自分の素性を恥じ、身が穢れといると嘆きます。私は、そもそもこの設定に疑問を感じてしまったのです。

はて… 江戸時代に築かれた吉原で『大夫』にまでのしあがった女性が、そんな事を考えるものだろうか?

今でこそ性風俗のエリアとして有名ですけど、江戸時代の吉原は流行(トレンド)発祥の地であり、吉原で働く女ともなれば、京都の芸妓に匹敵する芸の達人でした。

教養が高く、歌も踊りも茶道や華道にも長けた一流人。

遊ぶだけで、何百両、何千両と飛ぶのですから当然です。彼女たちは富裕層の相手を務め、満足させるのですから。金をいくら払っても惜しくない!と。

それだけのお金がひとつのエリアで動くとなれば、当然、経済の街、流行の街ともなる訳で…

さらに江戸時代の考え方についても少々。

この時代といいますのは、朱子学とか、四書五経(儒教)を教育の主として学んでいます。孝行、親を大切に!みたいな考えが基ですから、、

吉原の遊女は、両親に売られたから吉原に来ています。そんな彼女達は『親に尽くして働く人』なので、江戸時代の感覚では『立派な人』となる訳です。

ただし、売られてきた以上、廓(吉原)の中では人間扱いされていなかったようですが…

でも廓を揚がってしまえば、町の人ですし、吉原揚がりの教養人として一目置かれるようになる。

今の性風俗と風俗嬢は、岡場所の飯盛女が近いかもしれませんね!

私は吉原の街について、そういう頭でいるもんですから、浅田次郎の作品に疑問を持ちます。

小説を読み、あとがきまで読んで初めて、、

「そうか! この話は大正期って書いてあるからだ」と思い直します。恥ずかし〜っ🤭

もう少しだけ、歴史のおさらいをしましょう。小難しい話は抜きにして、私の歴史観なども書いてみます。

江戸幕末、黒船来航。

江戸時代の終わり… 日本に外国人が押し寄せ、軍事力の違いや国力の強さを、鎖国下にあった日本人に見せつけます。

こりゃー、ヤバいね。外国人には敵わないねと、知識人なら誰でも分かります。分かるけど、しきたりに縛られて動けない。でもそんな訳にはいかない!

とうとう日本は決断し、国を開きます。そして諸外国各国との交流が始まってゆき…

外国の価値観が入ってくると、もちろん宗教観なんかも入ってきます。キリスト教の教えですねー!

それまでの日本は、性にも大らかだったのですが、開国によってキリスト教や外国人の価値観が入り、貞操観念が芽生えてきます。

欧米列強に肩を並べて。

大正期なんか西洋文化がバンバン入ってきて、国民は豊かな諸外国に羨望の眼差しを向けてます。人々の頭には、それが素晴らしいこと、、となってゆくのです。

大正以降の、貞操観念やーん♪

うぉーっ、浅田次郎やっぱり良いゼ‼️と読み進めてしまう訳です。

さらに読み深めると、この太夫の心情を自分と重ね合わせてゆく…

平穏な日々、愛に満ちた毎日を夢見て、幸せを思う太夫。

そして私は、幸せとはいつか失われてゆくものである、と悲しくなってゆきます。

『幸せ』
夢見て、期待して、いつもサラサラとこぼれ落ちてゆく。不安な日々、落ち着かない毎日、それが私の人生。

幸せだと思う瞬間は絶対長く続かなくて、幸せを大切にしたいと願いながら、一瞬の内に終わってしまうもの。

… 私の中の、幸せはコレです。

満ち欠けする月のように、その都度膨らんで丸くなり、また消えてゆく。

小説でいう起承転結の、転でもあります。

実際の人生も喜びは束の間で、いつも真っ逆さまに堕ちてゆくように。

幸せは流れゆくものだから、期待しない。欲しがらない。その考え方はまるで、人は幸せで居てはいけないかのように。

結は、ネタバレになるから言わずにおきます。

太夫の出した答え。結末と、自己陶酔とも言える心情… 恥ずかしくなって、私にこんな小説は書けないだろう、と思いました。

浅田次郎自らが書いたあとがきを読み、『粋な祖父母がモデルです』とある。

なるほど、粋だなぁ… と感心してしまいました。これもまたひとつの、浅田文学なのでしょうね。

私、ばかやろうだから、平穏な日々を過ごすなどと言った当たり前の日々を捨ててしまうのかもしれません。

月島慕情、良い作品でした。

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