小説:「往きて還らず」団鬼六

日本文学

わたしのこと

みやび ひまり (雅 陽葵) と申します。

団 鬼六

20230422読了

特攻隊には並々ならぬ関心があり、読者に勧められて読んでみました。筆者は団鬼六です。

読み方は、だん「おにろく」「きろく」どちらでも良いとご本人は仰っていたそうですが、SM関係の方々からは「おにろく」先生と呼ばれていたように記憶しています。

SM作家

SM? 特攻隊の話なのに?

ご存知の方も多いと思いますが、団鬼六と言えばSM小説。杉本彩さん主演の映画「花と蛇」は一世を風靡するほどの大ヒットとなりました。

エチエチな話になってしまうのかと思いきや、性描写はごく僅かです。それでも読んでいますとドキドキしてしまうのが、団鬼六作品だと思いました。

あらすじ

前置きが長くなりましたが…

今回読んでみた「往きて還らず」について書いていきます。ネタバレ厳禁な方は、こちらで読み止めてくださいませ。

団鬼六の父が出会った人々、という話から始まります。

父は、太平洋末期に海軍の鹿屋基地で働いていました。兵隊ではなく内勤で、多くの特攻隊員を見送るのですが、忘れられない人が居ました。

特攻を志願した男・瀧川と、若い不倫相手の女性・八重子。

瀧川は、庶子ながら将校の息子であり、その父は特攻の生みの親となったメンバーの1人なのです。

日本は負けると分かっていながら、命を捧げることにした瀧川。自分亡き後の心残りはひとつだけ。愛する八重子が気がかりなのです。

なぁ、彼女を俺の代わりに愛してくれないか?

死ななきゃダメだからさ。俺は… みたいな感じで、ピアノの得意な八重子は、音大卒のヴァイオリニスト・中村に下げ渡されます。

愛する瀧川が死に、八重子は憔悴し切っておりましたが、優しく愛してくれる中村に心を開いてゆきます。そしてまた、中村が特攻で散ってゆきます。

なぁ、大切な八重ちゃんを守ってくれないか?

そうして、また別の若い隊員に引き渡されてゆくのです。

書評

この時代、女性は強く貞淑を求められていました。男達がたくさん死んでゆき、女ばかり溢れている。

団鬼六の世界は、女性の嫋やかな美しさや凜とした意志を描いています。悲しみの中にいる八重子ですが、その人格や生き方を否定するものではありません。

鬼六の父が八重子を受け継ぐことはなかったのですが、父にとって八重子は生涯忘れられない人となりました。

一部は、おおむね戦争末期から終戦まで。
二部は、それから数年後の戦後。

史実か、虚実か。いずれにしても鬼六の世界に引き込まれてゆくことでしょう。

タイトル「往きて還らず」(ゆきて かえらず)

生きて、行って、帰らず。では無いんです。目的を持って出発したら、もう戻らない…

3人の特攻隊員と八重子。往きて還ることのない、魅力あるキャラクター。

面白くて、あっという間に読めてしまう1冊です。

あとがき

団鬼六「往きて還らず」

現代において、特攻隊員を中心にした小説というのは、かなり出回っています。

お国に命を捧げた清らかな男達みたいな内容で、特攻隊を可哀想と涙する。

もちろん特攻なんてあってはいけない酷い話なんですけど、美しいものだなんて考えちゃいけない気がするんです。

私達にできるのは、悲劇を生まないようにするしかないですからね。

特攻隊員だけでなく、恋人を失った女もまた戦争の被害者である。

この団鬼六先生の作品「往きて還らず」を読んで、私はそう感じました。

こんな本こそ、戦争を語り継ぐ1冊として紹介したいです。

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