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雑学:火事と喧嘩で読み解く、ビジネス

面白い記事を見つけたので、引用します。

火事と喧嘩は江戸の華

江戸の町は、人口100万人以上が暮らしており、木造の住宅が密接して建っていました。そのため、2~3年に一度くらいの頻度で、頻繁に火事が発生していたといいます。

義理・人情・やせ我慢
江戸の町で火事が発生すると、「義理・人情・やせ我慢」が信条だといわれる江戸っ子としては、いてもたってもいられません。

特に商いを営む町人たちは、火事で焼き出された人たちを支援しようと、現場に駆けつけて炊き出しをしました。そしていつしか、商店同士で競い合うようになり、江戸っ子たちも、どこの商店が一番先に駆けつけたのかが、話題となっていきました。

本来は、ただのボランティアだったのかもしれませんが、コミュニティに速やかに寄り添い解決に向けて行動することが、江戸の街にある店の信用を高め、ビジネスの成功に繋がっていったそうです。

危機に瀕した局面で、地域のため、ひいては社会のために貢献する商いが求められるのは、江戸の町も、グローバル化した今の時代でも、同じかもしれません。

世界を救う開発目標

「民間企業のもつ創造力を結集し、未来世代の必要に応えていこうではありませんか」

第7代国際連合事務総長を務めたコフィー・アナン氏は1999年1月、世界経済フォーラムでこう呼びかけました。当時すでに、政府や国際機関では解決できない社会課題が噴出していました。アナン氏は企業に課題解決への参画を求め、そして世界の経営トップに「未来世代の必要に応えていこう」と、長期視点に立った経営を促しました。

2000年代後半、近視眼的な利益追求が経済危機が訪れます。社会課題の視点を欠いた場当たり的なビジネスは、長続きしません。時代を経て、より一層企業も将来の絵姿を描き、オープンイノベーションによって、課題解決に向けた着実に実現していく企業姿勢が問われています。

江戸の町人たちの姿勢、アナン氏の先見性のある訴え、世界経済危機の教訓があっても世界には課題が山積みです。なくならない貧困、食料危機、水不足、自然災害などから世界を守ろうと、国際社会は持続可能な開発目標(SDGs)を設定し、それらを解決するグローバルな取り組みに未来を託していきます。

開発目標が記された ”持続可能な開発のための2030アジェンダ” には、「我々は地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない。我々がこの開発目標に成功するのであれば2030年はより良い世界になるだろう」とあります。そして、「我々は民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションの発揮を求める」と呼びかけています。

人を中心にしたビジネス

近年では、特に社会はビジネスに課題解決を求めており、解決策を示せる企業が評価されています。ESG投資の広がりが象徴的です。ESG情報は、売上高やシェアだけでは評価しきれない企業価値を知る手がかりとなっています。

環境(E)・社会(S)・管理(G)を長期視点でしっかりとビジョンを持っている企業は課題解決力があり、社会から支持され、持続的に成長すると期待されています。「電力の普及率が何%未満だから困っているはずだと思っても、数字だけでは本当のニーズは分からない。現地にいるとニーズの強度がわかる」

アフリカで電力の量り売り事業などを進めているベンチャー企業、WASSHAの秋田智司氏は確信しています。アフリカでは、今なお多くの人が電気のない生活を送っており、この未電化地域の人口は、2030年になっても変わらないと予想されています。秋田氏は2015年、LEDランタン(携帯型照明器具)をレンタルするビジネスをアフリカで始めました。ソーラーパネルで発電した電気をランタンに充電し、それを有償で住民に提供するというものです。つまり、電力の量り売り事業です。先進国にいると、電力インフラの普及率の低さだけを見て、現地の人は生活に困っているはずだと決めつけてしまいがちですが、秋田氏は、大掛かりな投資やプロジェクトを展開していくことよりも、安価ですぐに利用できるLEDランタンで、より灯された明かりを囲んだ家族だんらんに、現地の人が価値を感じていると話しています。現地に足を運ばないとわからないニーズの本質なのです。

現地の人の価値を起点に、人に寄り添い、真の課題を見つける人間中心のアプローチがあります。ビジネスも「人間中心」で考え、くらしをつくる主体である「人」が、より快適に安心してくらすためには、人の感情や思いといった「人間」ならではの側面にも視点を向ける必要があります。

社会づくりの原動力

世界の課題はますます複雑になり、ひとり、一組織では解決できない課題が増えています。あらゆる主体とのパートナーシップによって思いもよらなかったアイデアが生まれ、技術革新が加速しています。課題解決の力が増幅され、ともに考え、ともに取り組む「協創」が、誰ひとり取り残さない持続可能な社会づくりの原動力となります。それを実現するためには、長期的な視点も不可欠です。

技術革新(イノベーション)が、社会を持続可能な(サステナブル)にできる。

言い換えるなら、企業には未来を変えるパワーがあります。江戸の町で培われ、近年でも実践していることです。そしてもちろん、これからも。持続可能性(サステナビリティ)は未来の私達です。

参考

「火事と喧嘩は江戸の華」
(文=日刊工業新聞社 編集委員・松木喬)

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